春の途端

とりとめもなし、思考や事象や日常について

ボストン美術館展の話

(どう撮っても反射してしまった、東美のメインポスター大きくて好き)

 

ボストン美術館展 芸術×力』に行ってきた。東京都美術館で10月2日まで。2020年に中止となった展覧会で、2年越しの実現となるらしい。それを聞くと、とても胸に迫るものがある。当時、同じ東美のハマスホイ展が会期途中で中止になったり、国立新美術館で予定されていたカラヴァッジョ展が、その作品輸送の難しさ(感染拡大を受け)から会期が始まる前に中止が決まったり、美術館との距離が急にぽっかりと開き、仕方のないかもしれないが、苦しく悲しかった。想像でしかないが、1度なくなった展覧会の都合を再びつけるというのは、非常に難しいのではないだろうか。今回この開催が叶ったことは、何だか光のように思えた。

ポスターに「日本の宝里帰り」とあるように、ボストン美術館収蔵である日本美術品の多い展覧会だった。日本にあれば国宝とされていたであろうという『平治物語絵巻 三条殿夜討巻』と『吉備大臣入唐絵巻』を始め、油画、水墨画、刀、磁器やアクセサリーを含む目に楽しい内容だったと感じる。平日に関わらず人が多かったので、あまりじっくりとは見られなかったのだけれど……芸術という表現で高める、権威者の【力】というものに一貫して焦点が当たっていて、その背景を念頭に置いた上で、それぞれの作品が”どう”用いられたのかを考えるのがとても面白かった。

 

私は、入ってすぐ真正面に現れるロベール・ルフェーヴルと工房<戴冠式の正装をしたナポレオン1世の肖像>と、エル・グレコ<祈る聖ドミニクス>、ジョン・シンガー・サージェント<1902年8月のエドワード7世戴冠式にて国家の剣を持つ、第6代ロンドンデリー侯爵チャールズ・スチュワートと従者を務めるW・C・ボーモント>、ラクロシュ・フレール社<日本風のブローチ>、増山雪斎<孔雀図>辺りが好き! 特に最後の<孔雀図>、孔雀の鮮やかな羽が縦の画面いっぱいに描かれていて、一瞬で目を奪われた。増山雪斎は伊勢長島藩の藩主、つまりは大名でありながら、虫の写生図譜や花鳥図などを多く残しているという。多彩だ……!

あと、人の多さから少ししか見れていないけれど<吉備大臣入唐絵巻>は、その物語のわくわくさも楽しい。遣唐使として派遣された吉備真備が、かつて遣唐使であり今は鬼(!)の阿倍仲麻呂に助けられつつ、唐の人間の難題を上手く躱していく話で、幽閉先から空中浮遊して移動したり、囲碁勝負を相手の碁石を飲んで制したり、すごく惹きこまれる。

仲麻呂と真備が空中浮遊しているシーン、絵巻では本当にちょこんとしているのだけれど、グッズにそこだけをめちゃくちゃ拡大した栞があって、別の柄に比べ非常に画質が荒いものだから思わず笑ってしまった。妙に愛を感じ、買ってきた。勉強のテキストに挟んでおいて、見るたびフフッとしよう。

 

東京都美術館、企画展がいつも豪華ですごい。次期に岡本太郎展、来年にはエゴン・シーレ展、マティス展と続々魅力的な展覧会が予定されていて、考えるだけでよだれが出てしまう……この秋も、冬も、楽しく美術館に出かけてゆきたい!

 

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これは、ボストン美術館展のホームページ