春の途端

とりとめもなし、思考や事象や日常について

ある閉ざされた雪の山荘で

bookclub.kodansha.co.jp

を、読んだ。

 

今ちょうど映画が公開されている作品。私もまず映画を観てから、本を読んだ。絶対これの原作面白いだろうなと思って……。映画も健闘していた方だとは思うし、これまでに観てきた、原作が蔑ろにされた実写化と比べるまでもなく丁寧だったけれど、やっぱり本が面白かった。ミステリって映像にするの難しいんだろうなあ。

東野圭吾、記憶にある限りでは今回が初めて。かろうじて(原作扱いになるけれど)ガリレオをちょっと観たことがあるくらいで、これまで文章に触れてはこなかった。

ミステリについて詳しくはないのですが、そんな初心者でも楽しめた。何なら映画でおおよそのトリックを知った後でも面白かったので、何も知らない状態で読める人のことがちょっと羨ましい。(逆に原作を履修してから映画に行こうとするのは、今回はあまりおすすめしません。)

物語の核心は突かないようにして、感想を少し喋ります。

 

ミステリと言えば、やはりクローズド・サークルが肝という印象が何となくながらあるのだけれど、この『ある閉ざされた〜』は、環境そのものにはそれが成り立っていないのが興味をそそられた。

テンプレート的によく聞くのは、ある孤島で、とか閉ざされた館で、とか。

けれど今回は、外は記録的な大雪、到底外に出ることはできず、電話線の断絶で外部との連絡手段もない“という設定”の、ペンション『四季』。

登場人物は皆、劇団の人間。実際は4月であるし、外には別段変わったところもない。電話も通じる。が、これは次回公演の配役についての試験的役割を兼ねており、外部と関わりを持った瞬間、不合格とされる。だから題名も、実のところは「山荘」くらいしか状況に合っていなかったり。このナチュラルなクローズド・サークルの形成が私的にツボだった。

大人数が、ひとつのペンションに何日もかけて滞在し、そしてまもなく場面は動いていく……という展開が、全員劇団員という設定ひとつで不自然でなくなるのが面白い。

 

初めに述べたが、私は放映中の映画化を観てからこの作品を知ったので、正直ミステリならではの旨みを全ては吸収できていないと感じている。悔しい。事前知識が一切ない方が楽しめると思います。

ちなみに映画についてですが、単体では全然楽しかった。間取りの都合上などで改変箇所は幾つかあったけれど、快い改変であったと感じる。原作に真摯に見えた。先に本を読むと満足できないんじゃないかなとは思う。

後はちらほら後処理の気になる描写が未読の状態でもあったけれども、それもささくれ程度でないかな、と個人的に。

 

そして、これが面白かったので、今日は早速『悪意』と『手紙』を買ってきました。

蔵書に東野圭吾が増えているの、今まで全く通ってこなかったから不思議な感じだ。

読むの楽しみ!