春の途端

とりとめもなし、思考や事象や日常について

幾許か前の日記

友人と呑んだ。友人は大分長い付き合いなので、人に対してあまり話すのが得意でない私もすらすらと口がほどけるようになってきた、ようやく最近だけれども。呑んだときの酔いというものがこれまでよく分からなかったが、色々なことを話したくなるというのがそれなのかもしれない。とにかく何でも喋ってしまいそうで理性が焦る。

互いにヲタクだから話したことといえばそういう感じ。好きなゲームとか、後は文豪についても——三島とか中原とか安吾とか、少しずつ——話したり。店から出ても、性癖に刺さる物語のこと話してた。江戸川乱歩『芋虫』がいいって話は結構尺が長く、私は夢野久作『瓶詰地獄』と『死後の恋』が最高だと言った。特に後者は刺さりに刺さり、色々な人に勧めたい。開けっ広げに勧められる内容では、正直無いが。

 

 

もっと若かった頃、私は大人になりたくなかった。学生時代出会ってきた大人(先生という生物)が揃いも揃って嫌いな人間ばかりで、どうして成年を過ぎて“大人”を冠したのに、彼らは一様にその意識を持たない、持とうと努力をしないのだろう、と思っていた。その仲間入りをするのが本当に、腹の底から嫌だった。今なら分かるけれど、彼らにとって大人は子どもと地続きなのだろう。(にしても随分と幼かったね。)

けれど、大人にならないまま死んでいたら知らなかったことは山ほどある。例えば友だちと飲むお酒の味も、その一つ。最近はだんだん大人であることに馴染んできて、私、大人になってよかったなって思う。これを私が言えることは大分すごい。勿論これから(制限がなければ)長く生きていくことにぼんやりとした不安はあるけれど、まずはこの新しく見出した喜びを、若い私に伝えてあげたい。