春の途端

とりとめもなし、思考や事象や日常について

人と話すこと、微笑うこと、隣を歩くこと

人と最近、いちばん近い。私の人生の中で間違いなく。と言っても、相手が私のもとへ来てくれるのであって、私は殆ど何もしないのだけれど。

大雨になるのを全く知らなかった。多分、TVのニュースを見ていなかったのだと思う。ネットは見ていたので教えてくれてもいいのに。ともかく、こんな大雨の中、ぐずぐずになった靴とズボンで(折りたたみ傘は無謀だ)夜遅くの映画を観に行った。私にとって、日を越さずとも暗がりが来れば等しく「夜遅い」。夜から行動することって中々ない。だから、今日は極立って素敵な日。

人に誘われていなければ、今日なんて行きやしない。見渡す先までを薄い膜のように雨は包み、車、信号機、常夜灯、あらゆる光に潤んで瞬くのだから、面白い。目の前が——最早からだ中が湿気ているが——鼻先を掠めていく雨で白んで見通し難い。面白い。

着く頃にはびしょ濡れで、髪はあちらこちらに気ままであるし、湿気は肌に重たくて、正直慣れない。けれどそこに至るまでの夜の都会の匂い、混屯の群れ、手を引いてくれた相手の温さが、私にとって新鮮だった。嬉しい、誰かと関われることに喜びを感じる日が来るなんて、数年前の私に告げてもとんがった応えが返ってくるだけだろう。