春の途端

とりとめもなし、思考や事象や日常について

気ままに、本のお話

自分の記事のカテゴリー分けを見ていて、「読書」が思っていたよりずっと少なく驚いた。

それほど量を読める人間じゃないけれど、にしても分かりやすく言語化するのを怠けている。

ので、今日は最近読んだ、読んでいる本のお話。

 

●菊千代抄(山本周五郎

青空文庫を楽しむことが増えた。アプリを入れているので、気軽に楽しめてよい。

菊千代抄は、とあるゲームの好きなキャラクターのモチーフ的なお話であるというのを噂で聞いて、じゃあ読んでみようかな、と思ったのが初め。ワイルドの『サロメ』も全く同じ動機で好きになった(この前オペラ観に行った!)のだが、菊千代抄も好きだ……となった。

俗っぽい話になってしまうけれど、設定に先ずロマンがあるよね。男装の——どころか、男として育てられた——女性。菊千代が苦しむ様を美しいと思った。到底自分の手には負えぬ激しい苦しみで、燃え盛るような様を。白くやわらかい肌にのしかかる一生を思うと、うっとりしてしまった。

 

●飴チョコの天使(小川未明

こちらも青空文庫で。小川未明は以前から好きで、『赤い蝋燭と人魚』がずっと忘れられない。今回の『飴チョコ~』はさみしさときらめくようなかわいらしさが同居していて、好きだな~と。(感想、結果として好きに行き着く)

漂うもの哀しさはあるけれど、幸福に終わって読後感すっきりだった。ページ数も多くなく、さらりと読めるのでよい。チャームポイントみたいなお話だったよ。

 

●鯨オーケストラ(吉田篤弘

ソフトカバー。数ヶ月前に出た新刊。これより前に同著者の『天使も怪物も眠る夜』も読んだ。あれも好きだったな~。

川の流れる町。夜のしんとした空気に合わせるように、ささやきで進行するラジオ番組。電車でしばらく行った先にある、海の底のような雰囲気を持った美術館。十年以上の昔、青年であった自分の自画像を描いたあの女性……。

 お話を読んだ私の印象も多分に含まれているけれども、吉田篤弘の作品は何よりその要素たちが素敵だとはとても繰り返したい。もう何度も言っているが! その中には恐らく吉田さんのお気に入りがいくつもあって、例えばラジオ。今回は主人公が声のお仕事でラジオ番組を持っているけれど、他作品にも「ラジオ」という道具は頻繁に登場して、それを聴く登場人物たちの心を潤している。そういった、人の「ときめき」を予測するの、好きだ。しているうち、私も何だかときめいてくる。

静かな町と、音楽と、鯨の重なり合う、心に灯るようなお話だった。素敵だった。

 

●アムリタ(上)(吉本ばなな

まだ上巻だけ! 吉本ばなな、文章の感じが軟らかいから読みやすいね。さざなみのような、さやかに耳が拾う音という印象のある話が多い気が勝手にしている、吉本ばなな作品。

そっと生まれた恋人という関係性、好きだ。恋より先に人間として大切に想っている風にも感じて、理想だと思った。下巻読むぞ~。

 

●夜長姫と耳男(坂口安吾

青空文庫で読んだ、数年前に読んでいて、今回再読。改めて「好き!!!」と思い、岩波のこのお話も載っている安吾の短編集もお迎えした。ほんとすき。

夜長姫の極まった純潔、他人から見て心底狂っているからこその清らかさ。彼女の為すことすべてが「人でなし」であるのに、彼女自身は生まれたときのまま、光るよう。主人公は耳男だけれど、鮮烈な夜長姫の印象がまぶたの裏に焼きついて離れない。

数年ぶりに読んで、殆ど夜長姫のことしか覚えていなかったことを知り、少し笑った。好きな女のことしか考えられていなかったらしい。

 

◯一年ののち(サガン

これは今読んでいる本! まだあまり読めていないけれど、これまでの『悲しみよ こんにちは』『ブラームスはお好き』『ある微笑』と比較すると、単純にスポットライトの当たる登場人物が多い。群像劇のよう、と言うのだろうか。また知らないテイストで、続きを楽しみにしている。

 

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まとめてみると、ちょくちょく読んでいた。短編が多いから実数として考えていなかったのかも。他にも更にさかのぼると、アニー・エルノー『シンプルな情熱』も。木下龍也『あなたのための短歌集』も読んだな、こっちの方が最近だ。

ひととの本の貸し借りもしているので、その本についても今後話せたら嬉しいな。

今日は、一先ずここまで。おやすみなさい。