春の途端

とりとめもなし、思考や事象や日常について

本を買う

本を買う。小川洋子『最果てアーケード』と木下龍也『オールアラウンドユー』。

元々別の用事で出てきた都会で、ちょっと時間潰しに、といった風で入った本屋だったから、思わぬ収穫が愛おしい。特に後者の『オールアラウンドユー』、表の布地が1冊ずつ色違いで、いちばん気に入ったのを手に入れた。かかったビニールを開けるのが楽しみ。

 

私が本を読むのは多分、世界が一つきりであるのを苦しく思うから。

小さい頃から、私たちが住んでいるのは地球で、地球だけで、例えばこの星がなくなってしまえば私たちもなく、後はひたすらに無だけ。息のできない無が一生という境をなしにあるだけ。そう考えると怖くて、泣いていた。小さい分だけ、周りのすべてが大きく見えたのだと思う。

幼い私は死の恐怖が強かったけれど、そうしてそれは幼少期につきものだと思うのだけれども、今の私はどこへも行けない恐怖が勝る。息の詰まる、“世界がここきり”という感覚。すごくつまらないし、気が狂いそう。だから本を開くと、まやかされる。こことは違う別の街があって、世界があって、そこで息している人がいること。それを考えると、楽になる。

 

所詮は死ぬまでのささやかなごまかしで、甘いしびれのような、目を逸らすだけのことだと分かっている。それでも本は私にとって窓で、その向こうの景色はほんとう。